家具化小説・チェア2
家具化小説・チェア2
「用意が出来たよ。 おやおや、何だかいい雰囲気じゃないか♪ お邪魔してしまったかな?」
ギィ、と重い音を立てて扉が開き、彼が戻ってきた。
オレは慌ててリアルドールの乳房から手を離すと、彼に「すみません、勝手に触ってしまって」と頭を下げる。
本当はドールの方から触らせてきたのだが、そんなことをバラしてしまったら、もしかしてこのドールの立場が悪くなってしまうかもしれないからな。
オレのせいでこいつがお仕置きされたりしたら、やっぱり後味が悪いものがある。
だが、予想と違い、彼はにこやかに笑いながら「いやいや、何か気を遣わせたみたいでこちらこそ申し訳ない」と会釈してきた。
そのまま彼は視線をゆったりとイスに座っているドールに移すと、
「お前もいつまでもノンビリ座ってないで着いてきなさい。 二階に行くよ。 君も来てくれるかな? お待ちかねのものをいろいろ見せてあげるよ」
と声をかけ、また扉の奥に引き返していく。
オレはドールに手を貸して立ち上がらせると、先に立って歩き出したその後を追って扉を潜った。
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* * *
狭く短い廊下の脇に扉が一つ。 多分これがさっきドールが紅茶を持ってきてくれた場所なのだろう。
その扉一つ分のスペースを数歩で歩ききると、急な階段があった。
かなり傾斜がきついから、オレは一瞬この可動範囲の狭い関節を持ったドールがここを上れるのか心配になるが、彼女は這うように両手両足を巧く使って器用に階段を上っていく。
なんだかホラー映画で見たような憶えのある光景にオレは苦笑しながら、彼女のあとを、オレはきちんと二本足で手すりに捕まりながら登っていった。
少女期のような少し固そうなお尻を振りながら登っていくボンデージ姿のリアルドールに見はまりながら登っていたせいで、オレは何度か階段を踏み外しそうになったが、何とか二階に辿り着くことが出来た。
* * *
二階には廊下が無く、すぐ目の前に扉があって、開いたその中にすでに二本足で立ち上がったドールが躊躇無く入っていく。
オレは戸惑いながらそのあとに入っていくと、中には社長が例のニコニコとした笑顔で待っていた。
「さて、ここは見ての通りただのストックルームだ。 ……さてさて、取り出したるはこのリモコン! これのこのボタンを押すと…… このとおり、壁が柔らかくなってしまったよ♪ さて、無事にくぐり抜けられたらご喝采!」
何だか三流マジシャンのような口調で彼が壁に手をかけ、そのままゆっくりそれを押していくと、ほとんど抵抗らしきものもなく、ずぶずぶと壁の中に埋もれていく。
あっという間に彼の全身が壁の中に消えてしまったかと思うと、傍らにいたリアルドールも彼の後に続いて壁に手をかけ、そしてその中へ消えていった。
さすがにオレは気味が悪くなったが、しかしここまで来て引き返す手はないだろうと思い切る。
それに、オレは彼が言っていた「他のドール」というのが気になって仕方がない。
さっき彼は「残念ながらこれは売れないけどね。 他のドールを見てみるかい?」と言っていた。
つまり、アレではない他のものなら売ってもらえるかもしれないと言うわけだ。
オレはフェチ心に押されるように壁に手をかける。
「……!」
それは本当に何の抵抗もなく、まるでスライムのような感触だけを手に伝えながらオレを壁の向こう側に導いてくれた。
怖じ気づきそうになったのがなんだったのかと思うほど、本当に呆気なかった。
* * *
壁の向こう側にあったのは、真の闇。
オレは一瞬パニックに陥りそうになったが、すぐにオレの手のひらに少しヒンヤリとした柔らかい感触が伝わって、オレを落ち着かせてくれた。
これはさっきのドールの手だろうか、オレを落ち着かせようと手を握ってくれた?
「ははは、驚いたかい? 演出だよ、演出! やっぱり何事にも演出が大事だからね♪ それじゃ、君に素晴らしいものをお見せするよ!」
少し離れた場所から彼の声が響き、パッと照明が点いた。
急に光量が多くなったせいで目をまともに開けていられない。
オレは薄目を開けて目を慣れさせてから、ゆっくりと目を開いていき……
そのままさらに大きく目を見開くことになった。
あまり広くはない部屋に、彼がいた。
足を組み、イスに腰掛けながら、オレの反応を楽しんでいるかのような笑顔。
……確かに楽しみたくもなるだろう。 多分今のオレは相当に惚けた顔をしているだろうから。
まず目についたのは、女の白い裸身。
とは言ってもそれは当然普通のものではない。
肌の質感はリアルドールのものと同じ感じだが、しかしそのポーズは明らかに異様だった。
なんと表現すればいいのだろうか、まず仰向けに寝て、それから腰を大きく曲げたまま顔の前でヒザを曲げて足を天に向けて突き出した感じ…… 子供の頃に体育でやった、空中自転車こぎのポーズに似ている。
オレは手を繋いでくれていたリアルドールに導かれて、フラフラと誘われるようにその『イス』に近づいていった。
なぜこれがイスとわかったのか、答えは簡単だ。
目の前で笑っている彼もまた、同じように別のこれに座っているのだから。
イスを間近で見ると、どうやら横に立つドールと素材自体は同じ物で出来ているらしく、表皮が照明を受けて柔らかく光っていた。
これにも、この『イス』の中にも本物の人間が収まっているのだろうか!?
汗一つかかずに、このきつそうなポーズで身じろぎさえしないこのイス人形の中に、実際は汗だくになりながら苦悶の表情を浮かべて耐えている人間が、この中に封印されているのだろうか!?
オレは、もしそれが本当なら、何を犠牲にしてでもこのイス人形を手に入れたいと心の底から願った。
3へつづく
ケータイ版3へ
※今回で終わりのはずだったのに、終わりませんでした。
※初の家具化もの。 ドールのバリエーションですけれどネ(^^;
※黒い系はやっぱり書きやすいです。
「用意が出来たよ。 おやおや、何だかいい雰囲気じゃないか♪ お邪魔してしまったかな?」
ギィ、と重い音を立てて扉が開き、彼が戻ってきた。
オレは慌ててリアルドールの乳房から手を離すと、彼に「すみません、勝手に触ってしまって」と頭を下げる。
本当はドールの方から触らせてきたのだが、そんなことをバラしてしまったら、もしかしてこのドールの立場が悪くなってしまうかもしれないからな。
オレのせいでこいつがお仕置きされたりしたら、やっぱり後味が悪いものがある。
だが、予想と違い、彼はにこやかに笑いながら「いやいや、何か気を遣わせたみたいでこちらこそ申し訳ない」と会釈してきた。
そのまま彼は視線をゆったりとイスに座っているドールに移すと、
「お前もいつまでもノンビリ座ってないで着いてきなさい。 二階に行くよ。 君も来てくれるかな? お待ちかねのものをいろいろ見せてあげるよ」
と声をかけ、また扉の奥に引き返していく。
オレはドールに手を貸して立ち上がらせると、先に立って歩き出したその後を追って扉を潜った。
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狭く短い廊下の脇に扉が一つ。 多分これがさっきドールが紅茶を持ってきてくれた場所なのだろう。
その扉一つ分のスペースを数歩で歩ききると、急な階段があった。
かなり傾斜がきついから、オレは一瞬この可動範囲の狭い関節を持ったドールがここを上れるのか心配になるが、彼女は這うように両手両足を巧く使って器用に階段を上っていく。
なんだかホラー映画で見たような憶えのある光景にオレは苦笑しながら、彼女のあとを、オレはきちんと二本足で手すりに捕まりながら登っていった。
少女期のような少し固そうなお尻を振りながら登っていくボンデージ姿のリアルドールに見はまりながら登っていたせいで、オレは何度か階段を踏み外しそうになったが、何とか二階に辿り着くことが出来た。
二階には廊下が無く、すぐ目の前に扉があって、開いたその中にすでに二本足で立ち上がったドールが躊躇無く入っていく。
オレは戸惑いながらそのあとに入っていくと、中には社長が例のニコニコとした笑顔で待っていた。
「さて、ここは見ての通りただのストックルームだ。 ……さてさて、取り出したるはこのリモコン! これのこのボタンを押すと…… このとおり、壁が柔らかくなってしまったよ♪ さて、無事にくぐり抜けられたらご喝采!」
何だか三流マジシャンのような口調で彼が壁に手をかけ、そのままゆっくりそれを押していくと、ほとんど抵抗らしきものもなく、ずぶずぶと壁の中に埋もれていく。
あっという間に彼の全身が壁の中に消えてしまったかと思うと、傍らにいたリアルドールも彼の後に続いて壁に手をかけ、そしてその中へ消えていった。
さすがにオレは気味が悪くなったが、しかしここまで来て引き返す手はないだろうと思い切る。
それに、オレは彼が言っていた「他のドール」というのが気になって仕方がない。
さっき彼は「残念ながらこれは売れないけどね。 他のドールを見てみるかい?」と言っていた。
つまり、アレではない他のものなら売ってもらえるかもしれないと言うわけだ。
オレはフェチ心に押されるように壁に手をかける。
「……!」
それは本当に何の抵抗もなく、まるでスライムのような感触だけを手に伝えながらオレを壁の向こう側に導いてくれた。
怖じ気づきそうになったのがなんだったのかと思うほど、本当に呆気なかった。
壁の向こう側にあったのは、真の闇。
オレは一瞬パニックに陥りそうになったが、すぐにオレの手のひらに少しヒンヤリとした柔らかい感触が伝わって、オレを落ち着かせてくれた。
これはさっきのドールの手だろうか、オレを落ち着かせようと手を握ってくれた?
「ははは、驚いたかい? 演出だよ、演出! やっぱり何事にも演出が大事だからね♪ それじゃ、君に素晴らしいものをお見せするよ!」
少し離れた場所から彼の声が響き、パッと照明が点いた。
急に光量が多くなったせいで目をまともに開けていられない。
オレは薄目を開けて目を慣れさせてから、ゆっくりと目を開いていき……
そのままさらに大きく目を見開くことになった。
あまり広くはない部屋に、彼がいた。
足を組み、イスに腰掛けながら、オレの反応を楽しんでいるかのような笑顔。
……確かに楽しみたくもなるだろう。 多分今のオレは相当に惚けた顔をしているだろうから。
まず目についたのは、女の白い裸身。
とは言ってもそれは当然普通のものではない。
肌の質感はリアルドールのものと同じ感じだが、しかしそのポーズは明らかに異様だった。
なんと表現すればいいのだろうか、まず仰向けに寝て、それから腰を大きく曲げたまま顔の前でヒザを曲げて足を天に向けて突き出した感じ…… 子供の頃に体育でやった、空中自転車こぎのポーズに似ている。
オレは手を繋いでくれていたリアルドールに導かれて、フラフラと誘われるようにその『イス』に近づいていった。
なぜこれがイスとわかったのか、答えは簡単だ。
目の前で笑っている彼もまた、同じように別のこれに座っているのだから。
イスを間近で見ると、どうやら横に立つドールと素材自体は同じ物で出来ているらしく、表皮が照明を受けて柔らかく光っていた。
これにも、この『イス』の中にも本物の人間が収まっているのだろうか!?
汗一つかかずに、このきつそうなポーズで身じろぎさえしないこのイス人形の中に、実際は汗だくになりながら苦悶の表情を浮かべて耐えている人間が、この中に封印されているのだろうか!?
オレは、もしそれが本当なら、何を犠牲にしてでもこのイス人形を手に入れたいと心の底から願った。
3へつづく
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※今回で終わりのはずだったのに、終わりませんでした。
※初の家具化もの。 ドールのバリエーションですけれどネ(^^;
※黒い系はやっぱり書きやすいです。